発達障害を持つ女医がこころの病気と健康について語る。
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SNSでの誹謗中傷と集団心理のおそろしさの話。

 

SNSの誹謗中傷が原因と言われる自殺のニュース

木村花さん、SNSでの誹謗中傷が1日に100件近く、自殺の可能性も。
私は残念ながら、この「木村花さん」という方を、このニュースを見るまで知りませんでしたが、「突然の死亡」というだけで、ネットでは「誹謗中傷だ」「自殺だ」と騒がれ始めました。
これは、おそらく誰か(複数の人)が「心当たりがあった」のだと思います。

過去にもインターネットの誹謗中傷で摘発されたケース

スマイリーキクチさんという芸人さんをご存知でしょうか。
ボキャブラ天国(1992年〜1999年)まで放送されていた人気お笑い番組で、
私はまさに青春まっさかりで毎回楽しく見ていました。

ある日突然、スマイリーキクチさんが、足立区で起きた「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人の一人ではないか、とネットで糾弾され始めたのです。

この事件で、スマイリーキクチさんは警察に何度も掛け合い、証拠を集め、訴えを起こします。その件については以下の本に詳しいです。


今回の件についても、説得力のあるツイートをされています。

人は集団になるとときとして狂気に満ちた行動をする

赤信号、みんなで渡れば怖くない。

子どものころ、そんなことを言って、車が来ない通りで赤信号を渡った経験はありませんか?
ただ、これ、どれだけ怖くなくても「法律違反」です。道路交通法違反。
そういう事実に、今のあなたは気付けていましたか?

ミルグラム実験ってご存知でしょうか?

これは、集団心理というか、「命令系統の恐ろしさ」にも繋がっているのですが、ミルグラム実験というのをご存知でしょうか?

 ミルグラム実験 

20歳から50歳までの健康な男性を集め、「看守役」と「囚人役」に分かれます(囚人役は役者さんをあてがっていたかもしれません)。
看守役は、上官である人間(実験のスタッフ)より、相手が答えなかった場合はより強い電流を流していくように、と言われます。
それは、15ボルトから450ボルトまで9段階あり、事前に7段回目に「非常に危険な衝撃」と書かれています。
ちなみに、電流は実際には流れません。看守役の押したボタンが何だったかに合わせて、囚人役の人は演技をし、あらかじめ録音した音声が流れます。
8段回目、9段回目は命の危険があると事前に分かっているにもかかわらず、被験者40人中26人もの人が「上官の命令だから」と最大のボタンを押したのです。これは、推測を大きく超える数値でした。

これは、ナチスドイツの強制収容所で、ユダヤ人を殺したりしていた人たちは「自分の頭でそれが良識的なものか判断できていたのか」ということに関する実験です。
「一般市民」が「全く考えることなく」「人をしにいたらしめるほどのダメージを」あたえることがあった、ということです。
これは、誰でも状況次第で加害者になり得ることを意味します。
でも、これが現在のSNSの誹謗中傷にも応用できると考えています。

集団心理・匿名性のなせる技

集団心理について書かれた本を、2冊ほど紹介させていただきます。

左側の本は、たくさんの事例をもとに、群衆心理について説明した本です。
右側の本は、「いじめ」ということに特化して、なぜいじめがなくならないのか、ということについて書かれています。今回の件にも通じる部分があります。

今はインターネットに本当の匿名性などないに等しい

インターネットというのは「匿名性」を謳われていますが、それは基本的に真っ当なことをしているからです。
真っ当なことをしなくなったら、「匿名性」は担保されません。
Twitter社は誰がどこで何をしているのかを把握しており、弁護士の「情報開示請求」があれば、発信者の情報を弁護士に提供します。
要するに「悪事を働けばすぐに個人特定など用意」ということです。

今、「誹謗中傷と戦うこと」は「無駄金」を注ぎ込む道楽の様相


ただ、現在はこのツイートにもある通り、事件にするための金額が高過ぎます。
これだけのお金をかけても、相手が無職の生活保護であった場合は、「勝訴」しても「裁判費用の回収」すらできないからです。
このため、泣き寝入りをしている人は多かったと思います。

「裁かれることもある」から「裁かれる」時代への転換を期待

ネット上の誹謗中傷、発信者特定へ制度改正検討 高市総務相
「泣き寝入りしなくていい時代に」ということで、発信者の特定をスピーディに行われることで、「泣き寝入りせずに裁かれる時代」がくるかもしれません。

「誹謗中傷」は「犯罪」です

誹謗中傷は、犯罪です。スマイリーキクチさんの事件でも不起訴になったり、嫌疑不十分になったりしていますが、それも過去の話です。
民事裁判では、こうやって犯人側に賠償金の支払いを命じる判決も出ています。

「他にもやってる人がいるから」で簡単に手を出すと痛い目を見る

言論の自由をこういうときに声高に叫ばれる方がいます。

ただ、言論の自由というのは、「誰かの尊厳を傷つけない限り」認められるもので、こういったヘイトには許されるものではありません。
みんながやっているから「ノリで」やったりすると、人生を狂わされることもありえます。

誹謗中傷で傷ついている方へ

 傷ついているあなたに伝えたいこと 
  • なにより大切なのは、あなたの命です
  • あなたはすでに、充分に傷ついてきました。これ以上傷つけたくありません
  • 誰にも相談できず一人で思い詰めてしまう前に、「精神科で相談」しませんか
  • 医師の診断書があった方が、警察なども受け入れてくれやすいかと思います

まとめ

まとめ

SNSでの誹謗中傷は、犯罪です。許されるべきことではありません。
ただし、「集団でのいじめ」には「集団心理」が働き、普段であれば普通の人が、思いも寄らない行動をとることがありえます。
「誰しも加害者になりうる」ということを頭の隅に置いておきましょう。
もし、誹謗中傷を受けているあなたがここを観ていたら、ひとりで抱え込まずに「精神科へ相談」してください。診断書など、お役に立てることがあるかもしれません。

今日はここまでになります。最後まで読んでいただいてありがとうございました!