発達障害を持つ女医がこころの病気と健康について語る。
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「主治医」と「産業医」の違い。敵?味方??

 

架空の症例を提示します

ここはわかりやすく、症例提示をして進んでいきましょう。

 Aさん(男性)の場合 

36歳男性、東証一部上場企業に勤務して、12年。1年前に配置転換になり、同時に中間管理職になった。当初はうまくいっていたが、上司より過剰なプレッシャーを受けるようになり、残業が増え、自宅に帰っても仕事のことが頭から離れず、寝付きが悪くなった。徐々に顔色が悪くなったため、妻の勧めで精神科クリニックを受診した。
「抑うつ状態」の診断で1ヶ月の休職と薬物による治療が行われた。

その後、状態が改善する。

 その後の経過 

薬物がよく効いて、寝つきは良くなり、主治医であるA先生ののアドバイスで散歩などを始めた。抑うつ症状はなくなり、元気でいられる時間が徐々に増えていった。
1ヶ月後、主治医は「これなら少しずつ仕事に戻ってもいいかもしれないですね」と言い、「復職可能であるが、時間外勤務をさせないなどの配慮は要する」という診断書をもらった。

これで、復職ができる、でしょうか?
Aさんは会社に主治医の診断書を持って出かけます。

会社にて、産業医と上司と面談をする

 会社との面談 

上司「残業はできないってことだよね?」
産業医「これでは・・・今は人が足りない時期だから君だけ特別扱い・・・できます?」
上司「みんなの目もあるし、それならまだ休んどいてもらった方がいいなー」
産業医「ではもう少し復職は先にしましょう。休職が必要っていう診断書を改めてもらってきてくれませんか。」
Aさん「そんな・・・」
Aさんの復職は、認められませんでした。

その後の流れ

今回は、極端なケースを取り上げているので、このAさんのケースは最悪の流れに持っていきたいと思います。

 その後の経過 

Aさんは、病院のデイケアに通いながら、復職を目指しました。
主治医は何度か「復職可能であるが、業務負担には配慮を求める」という診断書を出しましたが、いつも産業医と上司との面談で「復職を許可できない」と言われてしまいました。
その後2年が過ぎ、「病気による休職」が会社の規定上2年が上限と定められていたので、Aさんは退職せざるを得ませんでした。その後、別の会社に「うつ病であることをオープンにして」就職し、現在はまた別の仕事についています。

主治医と産業医、なぜ判断が分かれたのか?

同じ医者なのに、なぜ、主治医と産業医の意見・判断はずっと平行線だったのでしょうか?主治医は精神科で、産業医とは専門が違うから?

雇用主の問題が、明暗を分ける

主治医と産業医の雇用主
主治医というのは「自分の経営するクリニック」もしくは「他人の経営する病院orクリニック」に勤務しているものです。
そのため「患者のことを最優先に考えて治療」します。当たり前のことのように思えるかもしれませんが、ここが大事なポイントです。
一方で、産業医はを雇用しているのは誰でしょうか?
答えは簡単です「会社」です。ですから、この人を復職させることが会社の利益につながるかどうか、という考え方をします。

この場合、「上司」と「産業医」は、「Aさんを復職させると逆に他の社員の士気が下がり、会社の利益がマイナスになる」という判断をしていた、ということになります。
こういった場合、「主治医と産業医が直接話をする」とか、「傷病手当の診断書をブッチする(荒技なのでお勧めしないがやったことはある)」と言ったいろいろな手を使って、「産業医と上司が復職に納得する」まで復職を交渉しないといけません。
主治医によっていろいろな手をお持ちだと思うので、相談してみてください。

まとめ

まとめ
  • 会社を何らかの形で休職することになった場合は、主治医の診断書が必要です。
  • 復職の際には、主治医の診断書とともに、「産業医」や「上司など」会社側の許可が必要です。
  • 「上司など」に加え、「産業医」も企業側に雇われた人間ですので、会社の利益を最優先に考えるので、主治医とは異なる判断を下す場合があります
  • 主治医は認めた復職を産業医が了承しない場合は、主治医と作戦を立てましょう。
    (私は傷病手当の診断書に「主治医は労務可能と判断するが会社が認めない」と病状欄に書きましたら、翌月に復職が決まったことがあります)

May 04, 2020 - posted by みずき@精神科医

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