発達障害を持つ女医がこころの病気と健康について語る。
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精神科のドクター(医者)ってメンタル強いの?

 

「精神科のお医者さんって、メンタル強そう!」

これは、配信アプリを見ていたときに、配信者さんがぽろっと言われたことなのですが。

精神科の先生ってメンタルなんか強そう!え、そうじゃない?だってプロだし。だってそうじゃないと引きずられそうだし!

(謎の人になってますが、実物は綺麗な女性です)

まず、イメージと実態に乖離が存在する

こういう発言って、一般の人の「精神科」に対するイメージと、実際の「精神科」の実態がズレてるから起きることなのではないかな、と思います。
ただ一般の人のイメージは「精神科クリニック」には近いかもしれません。

一般の人のイメージ

 一般の人のイメージ 

待合室はくつろげる雰囲気で、ゆったりとしたソファーがある。
患者さんたちは「仕事に疲れて」とか「人間関係がうまくいかなくて」といったような理由で病院にきている。
見た目は普通の人で、一見して「精神科の病気を持っている」とは思えない。
診察室での相談の内容は、「会社の愚痴」や「家庭の問題」だったり、誰でも共感できるものが多い。
そのため、診察室の場を離れても「あの人は今大丈夫かな・・・」とか、精神科医が気持ちとしてプライベートの時間に引きずるのではないか。

どうでしょうか?私の推測、あたってますでしょうか?
ただ、ターミナル駅の近くにあるようなクリニックは、このイメージ通りかもしれません。

実際はどうなのか

 実際の「精神科」 

ちなみに私が働いているのは「精神科病院」といって、患者さんが入院できる病院なんです。
ここで大半をしめている病気は、「統合失調症」「躁うつ病」「認知症」など、クリニックにいる患者さんの層とは少し違います。
患者さんや家族がいうことは、確かに自宅での介護のつらさなどもありますが、
「下の階の人から狙われている。昨日は銃撃戦があった」とか。
「作業所で出会うあの人は、いつも私にテレパシーで嫌がらせをしてくる」とか。
そういった、「妄想」に支配されて、妄想の世界を語ってくる人もいます。
精神科医の立場からは、患者さんには「それは大変ですね」とは言いますが、
さすがに、そんな話をプライベートまで引きずることはありません・・・。
(これは、どれだけ重症の入院患者さんでも引きずることはなくて、患者さんは病院と言う守られた環境にいるし、私自身は自分の病院のスタッフを信頼しているので、自分がいない時間帯は自分でないスタッフがなんとかしてくれると思っています。)

「精神科医」のメンタル

じゃあ結局、精神科医のメンタルってどうなの?となると。

人それぞれですね。

としか言いようがないのですが・・・。

意外といる「精神疾患経験したから精神科医になった」人

精神疾患を乗り越えた精神科医の先生は、実際におられます。


この本の先生は、児童精神科を専門とされている方で、心の病になったことのある先生です。非常に柔らかい口調で書かれており、読みやすい本でおすすめです。
いつかお会いしてみたいなあ、と思う先生の1人です。

年数を重ねれば、持ち越さないことはできるようになる

ただし、精神科医になりたての1年目の先生は、引きずってしまうことが多いのではないかな、と思います。まだ、患者さんとの付き合いに慣れていないし、自分のする診療にも不安があり、どうしても家で、「あの患者さんどうしているだろう」と考えてしまいます。
でも、そんな先生でも5年、10年と精神科医を継続していれば、家に持ち込まないで、自分がしんどくならない診察スタイル・診療の仕方を見つけていくものです。

私の場合はどうか

では私。みずき@精神科医の場合はどうか、お伝えしましょう。

精神科の通院歴を軽く並べてみる

自分史をあえて語る
最初に鬱になったのは浪人生のときでした。
自分が「奈落の底」に落ちていくのを感じました。
不眠になり、ひとりでいられなくなり、急に泣き出したり、いろいろありました。
18歳の5月、最初に精神科に受診をしました。
大学に入ってからは母親の代理受診などもしてもらっていましたが、
22歳のときに当時の付き合っていた相手とのトラブルから自殺企図に至り、
大学の近くの精神科に変わりました。
社会人になり、妊娠して、出産して、産後うつになって、復職して、一度休憩したり、いろいろな医者人生でしたが、今は精神科医をしています。7年目になりました。

自分のメンタルは例えるなら「高野豆腐」メンタル

そんな自分のメンタルは、豆腐のようにもろい、ともいいきれません。
意外と、打たれ強いときもあるし、かといってそれで?みたいな打たれ弱いときもあるし、
殴られて形が崩れても、気づいたら元に戻っているような感じもあるし。
・・・・高野豆腐メンタルっていうのが近いかなあ。
なんて思っています。

「お豆腐メンタル」と公言している人もいる

https://twitter.com/sakura_tnh/status/1246378729305063425
Twitterで大人気の「さくら先生」ですが、自分でお豆腐メンタルと公言されています。
でも私は、こういう紆余曲折を乗り越えてきた先生も、精神科医としては必要だと思っています。
患者になってみないと、患者さんの気持ちはわからない、そんな部分もあるかもしれません。

まとめ

まとめ

「精神科医はメンタルが強いのではないか」というのは、皆さんの持っている精神科へのイメージが作った幻想かもしれません。
精神疾患を克服して&精神疾患を持ちながら、精神科医をしている人もいます。
結局は人それぞれ、いろんな精神科医がいるということですね。

今日はここまでになります。夏刈先生の本は、本当におすすめなので、ぜひ読んでみてくださいね。

May 30, 2020 - posted by みずき@精神科医

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