子どものころの有害体験が老年期のうつ病を増やす!?
子どものころにどう過ごすかが、一生を左右するお話。
今回は、少し専門的になるのですが、
「日本の小児自殺念慮と老年期うつ病の関連性:人口ベースの横断的研究」
という論文について、これは役に立つのではないかと思い、日本語で私なりにまとめを作ることにしました。
元は、東京医科歯科大学の森田彩子先生(国際健康推進医学分野講師)の先生が、涌谷町で行った研究になります。
小児期の「有害体験(ACE)」はのちの人生にかなり影響を与えることは以前から指摘されてきた
ただの論文の羅列になってしまうのですが、
子どものころの「有害体験(ACE)」がその後の人生におおきく影響をあたえるという論文は、今までもたくさん書かれてきました。
いくつかの具体例をあげておきます。
「子どもの有害な経験と子どもの実行機能の困難:系統的レビュー。」
(36の研究をまとめたもので、虐待と子どもたちの実行機能障害に関連性が見られた。)
「小児期の有害な経験と成人期のメンタルヘルス:ノースカロライナ州からの証拠。」
(小児期の有害体験は、成人期のメンタルヘルス不良の統計的に有意な予測因子)
そして、これは代表的な2冊の本です。対になっている形ですので、読むのであれば両方を読むことをお勧めします。
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そもそも「有害体験(ACE)」ってなに?
有害体験って、なんやねん。はっきりしてくれ。
そんな声がそろそろ聞こえてきている気がします。
かんたんにまとめるとこういった体験をしてしまうと「有害体験をした」といわれます。
常識的な人であれば、「そりゃこれは有害だ」と感じていただけるかと思います。
今回、日本の研究で小児期の有害体験(ACE)が老年期のうつのリスクを増やすと報告
そして、今回の論文に入っていきましょう。
この研究は、以下の手順で行われました。
- 18歳までの子どもに、「自殺を真剣に考えたことがあるか」を聞き取り調査
- 老年期のうつ病は、老年性うつ病評価尺度日本語版(15項目)を用いて評価
- データの解析にはポアゾン回帰をチョイス
(筆者はポアゾン回帰についてはちんぷんかんぷんなので説明ページをリンクしました)
子どものころ(小児期)に自殺を考えた割合は?
ではまず、18歳までの子どもたちは、どのくらいの割合で真剣に自殺を考えたことがあるのでしょうか。
小児期の自殺念慮と老年期のうつ病に正の相関が!
ここで、統計処理が行われます。性別、年齢、個人属性、子どものころの有害体験などで調整して、老年期うつ病と比較します。
その結果が、これです。表だけではわからない、と思われるかもしれませんが、
子どものころの有害体験がある子どもは、普通の人よりも歳をとってうつ病になるリスクが1.4倍になるという結果が得られています。
その人たちは成人の時期はどうだったの?
でも、子どもから大人になるまでの間にいろいろあるんじゃないの?その辺は関係ないの?
もちろん、こういった考えが出てくるのも当たり前です。
でも、会経済的地位や最近のストレス要因、健康状態を調査した後でも、小児期の有害体験が老人になってからのうつ病を増やすという結果には、変化がなかったのです。
子どものころに「死にたい」と思ったことがある子にはサポートを
では、有害体験(ACE)を体験してしまった子どもは、どうすればいいのでしょうか。
これに尽きます。小児科でも精神科でもいい、カウンセリングでもいい、なんでもいいので、子どものトラウマを扱ってくれる専門家のところにたどり着きましょう。
児童相談所に保護されたりすると、そういったケアをすることが前提で関わってもらえますが、家で頑張っている子たちは、少しでも早く、専門家のサポートを受けてください。
まずは、スクールカウンセラーさんへ相談する、のがハードルが低いかもしれませんね。
まとめ
以下の2冊の本は、本当におすすめなのでぜひ読んでみてくださいね。
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