発達障害を持つ女医がこころの病気と健康について語る。
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「境界知能」って、知ってますか?いろいろ大変なんです。

 

知能指数(IQ)って、知っていますか?

もし、知らない人のためにまずは解説。

IQというのは、知能検査の評価の表示の仕方の1つで、高いほど知能が高く、低いほど知能が低いことを表します。

これは、相対的な評価になっています。
要するに「人と比べた」評価です。
下に載せたグラフの通り、真ん中は100(赤い縦線)で、これが「普通の人」です。
(ただし日本人のIQの平均は105ではないかという話もあります)

(出典:Wikipedia
横がIQで、縦は人口に占める割合です。
こういったグラフを「正規分布のグラフ」と言います。

知的障害って、知っていますか?

知的障害というのは、さきほどのグラフの横の数字、「70から左側」の人のことを言います。
70-130の中に95%の人がおさまるので、その「70に足りない」ということは、うまい言い方はあるのかもしれませんが「異常」と判断されます。

  • IQ70-50を軽度知的障害
  • IQ50-35を中等度知的障害
  • IQ35-20を重度知的障害
  • IQ20未満を最重度知的障害

さらにこのように分類されますが、ここではその分類は大事でないので先に進みます。

知的障害があると「療育手帳」がもらえます

知的障害が疑われた段階で、「IQの検査をしてもらえる施設」を紹介してもらえます。
そこで、市役所(区役所)などの窓口(これは都道府県によって違うので問い合わせてください)に申請をすると、「療育手帳」がもらえます。
厚生労働省の公的な文書もありますが難しいのでおいておいて・・・

療育手帳とは
  • 知的障害があることを証明する手帳になります。
  • IQの数値によって「A」「B1」「B2」などの等級が分かれます。
  • 「支援学校」にいくための切符が手に入ります。
  • 生活に支障がある場合は「支援」が受けやすくなります。
  • 「働く」ときに「就労支援」が受けられます。
  • 「障害年金」が受けられます。20歳になったときに申請することができます

(最近では「療育手帳」という名前ではなく「愛の手帳」「愛護手帳」「みどりの手帳」など都道府県によって名前が変わる場合があるようです。)

「支援学校」というのも、「療育手帳」がないと原則入れません

私が住む地域では、「〇〇支援学校」と書いたバスが、生徒さんを迎えに回っています。
この「支援学校」というのも「療育手帳がない」と入ることができません。

最近、IQが70以上であっても発達障害があれば療育手帳がもらえるところもあるようですが、まだまだそちらの方が珍しいことです。IQで一律に切られてしまう場合が多いです。

境界知能って知っていますか?

最初のグラフをもう一度見てみましょう。

70以下がグリーンになっていました。そのすぐ右、70-85のゾーンは、青色で表示されています。

この70-85のゾーンが「境界知能」と呼ばれる人たちです。

先ほど、IQは70-130の間に95%がおさまると書きましたが、IQ85-115の間に68%がおさまります。この70-85の間には、単純計算でおよそ15%程度の人がいます。

小学校の授業を、サポートなしに全部理解するのは厳しいIQ

 IQ70-85の人とは 
  • 小学校のカラーで印刷されたテストで点数をとることができません。
    (当たり前のように85〜100点を取っていた層には理解できないと思います)
  • 普通学級で普通に授業を受けていたら、ついていけません。
  • 35人クラスでは、単純計算では「下位5人」が境界知能です。
    (もちろん、私立小学校にはあてはまりません)
  • 発達障害がある場合もありますが、ない場合もあります。
  • 「いじめ」の対象にもなりやすいです。

どうでしょうか。少し、イメージが湧いてきましたか?
要するに、「普通学級にいるできない子」たちです。

そのため、小学生のころから「人よりできない」と自尊心が育ちません

 境界知能の問題点 
  • 同じクラスの人と点数を比べて「自分はできない」「バカ」など自分に否定的なイメージを抱えてしまいがちです。
  • いじめられたり、からかわれたりすることで、自尊心が育ちません。
  • ただし、現在は支援級は療育手帳なしでも入れるので、算数や国語は支援級に行っているかもしれません。

支援した方がいいんじゃないか?サポートが必要なんじゃないか?と思いませんか?

でも「療育手帳」はもらえない

それでも、知能検査で70を超えているので、「療育手帳はもらえません」
これだけは、悲しい事実です。

ですから、高校を選ぶときの選択肢に「支援学校」は入りません。
「専修学校」や「偏差値が低くてなんとか入れる高校」に入るしかありません。
就職も「自力で探す」ことになります。
(大学への進学や専門学校への進学があったとしても)

ただ別に発達障害などあれば「精神障害者手帳」はとれることがあります

もし、発達障害や、学校などで頑張れなくなって「精神科」に通院歴があるような人は、「精神障害者手帳」が取れます。
療育手帳と全く同じにはいきませんが、「必要な支援」が受けられるようになります。

「療育手帳」がないので、手厚い支援は受けられません

障害者就労と、普通の就労
障害者就労は、「障害者であることを理解してもらった」上で、「サポートする人」が企業の中にも、外にも、います。
しかし、境界知能の人は精神障害者手帳を使わなければ、「一般就労」という普通の働き方をすることになります。
でも普通の働き方をするということは、「普通の人と同じレベル」を求められるということになります。

結果、就職してから「不適応」を起こすことが多い

普通の人と、普通の人として働くこと
小学校のクラスの中で、「下位5人」であって、知的障害とは言えないけど、知能レベルが知的障害を除くと下位15%を占める人が、
「普通の人と同じ結果を求められ」て「普通の人として働く」というのは、けっこうハードなことだと思いませんか?
でも、見た目は普通だから、普通の高校を出てるから、「できないことを上司に叱責」されたり、「できないことで周囲から陰口」を叩かれてしまう人がいます。
でも「精一杯頑張って」も、「普通の人と同じレベル」の結果は出せないんです。
その結果、精神科への通院が必要になるくらい、気分が落ち込んでしまったり、死んでしまいたくなったりする人が、います。
また、職場にいづらくなって転職を繰り返す人もいます。

Twitterでも

Twitterでもいろいろな人が言及しています。


そして、一番最近有名になった本がこれですね。
「コグトレ」が万能というわけではありませんが、かなり有用だと思います。

まとめ

まとめ
  • 知能指数を測った結果として示されるIQ、70以下は知的障害と診断される
  • 知的障害があると療育手帳が支給され、支援が受けられる
  • しかし、「普通」を100とするIQのなかで、70-85の人たちは、療育手帳をもらえない
  • 「普通の人」には能力が及ばないのに「普通の人」を求められることがある
  • そのために「不適応」を起こし、転職を繰り返したり心を病んだりする人がいる
  • そんな人たちがいることを、知って欲しい

今日のブログは以上になります。以下の本、本当に人気になりましたし、わかりやすい本なのでぜひ読んでみてください。