精神科の黒歴史:ロボトミー手術(人権侵害)
ロボトミーって、知っていますか?
これは、精神科に「薬」というものが全くなかったときに、凶暴な精神科患者を治療する「画期的な手術」として誕生しました。ポルトガルの精神科医、モニスによって考案され、アメリカのウォルター・フリーマン博士の手によって、ワシントンDCで行われたのが最初と言われています。
その当時、神経梅毒には「ペニシリン」がありましたが、いわゆる統合失調症や躁うつ病には「治療薬」というものがありませんでした。
患者さんは「隔離施設で鎖に繋がれているのが普通」でした。それほどまでに「凶暴である」と思われていたとも言えます。
そんな中、脳の前のほうにある「前頭葉」というものを切除することで、「凶暴だった患者」が「凶暴ではない患者」になりました。
しかし、てんかん発作、人格が変わって別人のようになる、無気力になってしまうなど、元に戻ることのない取り返しのつかない副作用が起きました。
このノーベル賞の受賞が、精神科にとって黒歴史なのです。だって、患者さんは「元の自分の人格」を失ってしまうのだから。
「人権侵害だ」といってそのあとたくさんの批判にさらされます。
また、1952年には画期的な治療薬である「クロルプロマジン」が発明され、次々に効果のある薬が出てきたことで、「精神外科」とも言われるべき「ロボトミー手術」は行われなくなってきています。
日本でのロボトミー手術
日本では、昭和17年に新潟大学で行われたのを皮切りに、「統合失調症の患者」を選んで、たくさんのロボトミー手術が行われてきました。
モニスが批判にさらされ、世界中でロボトミー手術が行われなくなってきてから後も、日本はロボトミー手術が行われてきました。なんと、昭和50年に日本精神神経医学会が中止を勧告するまで、ずっと。
昭和50年まで手術をされていたということで、現在もロボトミーを受けた患者さんというのが日本には生存しています。主に精神科の単科病院に入院し続けてることが多いですが、私が見たロボトミーを受けたことのある患者さんは、以下のような状態でした。
「人間性がなくなっている」「人権が侵害されている」と言わずしてなんと言えるでしょうか。ロボトミー手術は、精神科の歴史の中で闇に葬られてきたのです。
ロボトミー手術を記録として残す
そんなロボトミー手術ですが、その負の歴史も、しっかり語り継いでいこうという流れになっています。
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左側は、ロボトミー手術をたくさん行ってきた人で、その自伝です。ロボトミー手術を行ったこと、その事実と向き合って、書き溜められたもので、苦悩や思いが非常に伝わりやすくなっています。
右側は、12歳でロボトミー手術を受けた人のその後の人生を書いたものです。
ただ「やんちゃである」というだけで義母の同意でロボトミー手術を受けさせられ、そんな中で、どんな人生を歩み、自分の人生を少しでも取り戻そうと、生きる姿を書いた本です。
どちらも良書で、非常におすすめです。
かつてはそれらは「精神外科」と呼ばれていた
そして、その時は「精神科」とは別に「精神外科」という科が存在していました。
この「精神外科」今となっては聞いたことない人も多いと思うのですが、
精神科の黒歴史だからといって、目を瞑って逃げていてはいけないのです。
まとめ
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