発達障害と犯罪の関連性−「孤立」との関連性−
過去の重大犯罪を取り上げたこんな本があります
2005年に起きた事件で
『大阪姉妹殺人事件』
という事件があります。
その残忍な殺害方法と
送検される時の加害者の不敵な笑みから
当時は世間を震撼させた事件です
その事件を取り上げた本が
いくつか出版されています。
今回、わたし、みずき@精神科医が読んだのは、
このうちの左側の本です(右はすでに絶版の様子)。
平成21年に、共同通信社の記者2名が
綿密な聞き取りから淡々と事実を述べているもので
いくつかの問題提起を訴える本です
みずき@精神科医の書評
発達障害の本などを買っていて
関連するもの、に上がってきた本を
欲しいものリストに入れたのはだいぶ前です
今回、マイスリーによる散財事件(笑)により
手元に届き、先ほど読了しました
- 加害者が発達障害だったかどうかは明確にされない
- 「支援」がいる人が支援が得られなかったことで
2つの殺人事件を重ねてしまったという内容 - 発達障害の当事者会へのインタビューをして
当事者から見た事件の見え方を取り上げている
ざっと要約するとそんな本でした
それを受けての感想としては
- 生育歴に対する綿密な調査に頭が下がる
- ストレスフルな生育歴を抱えており
診断が分かれた(発達障害or人格障害)ことについては納得できた - 専門家はまだしも当事者たち(当事者会の主要メンバー)は
非常に楽観的に「うちにくれば起こさなかった」と繰り返し
その部分は非常に違和感を覚えた - どこまで配慮しても発達障害者が加害者であると
感じてしまう読者はいそうで歯痒い思いはあった
というところです。
おのおのの職種や立場によって
うける印象や感想は変わってくると思うので
一度は読んで欲しい1冊ではある
この本が真に目指したのは「支援」の発展
この本が目指していたのは
「刑罰」ではなく「支援」が必要ということで
その「支援の必要性の周知」を目指している
タイトルと本の紹介から
以下に2つの議題をあげてみたい
議題①:発達障害の人は加害者になりやすいのか?
この事件以外にも
発達障害を持つ人が加害者である事件は他にもある
そのため
『発達障害の人は犯罪を起こしやすい』
といった誤った認識を持つ方もいると思う
実は、むしろ被害者になりやすいと言われている
発達障害のある子供と若者の間での性的暴行の被害者
スウェーデンの精神障害のある人における暴力にさらされるリスクと暴力の蔓延
これらの論文にも示される通り
発達障害を取り扱った成書にも
むしろ詐欺や暴力、性被害の被害者になりやすい
といわれています
ただし「突拍子もない」事件を起こすことがある
しかし、上記の本でも触れられている通り
「理解不能・突拍子もない」犯行・動機・方法
そう周囲が感じる世間を騒がせる事件が
起きることがあります
「突拍子もない」と思われる理由
「突拍子もない」と思われる理由はいくつかあげられます
- 彼らは彼らの信念と一貫性を持って動いていること
- 彼らの信念と一貫性は一般の人からは理解ができないことがある
- パニックに陥って行動しており
結果としてとった行動は本人もよくわかっていない - ささいなストレスは表現できず
爆発性を伴う重大事件に至るまで周囲は気づいていない
どうでしょうか?
「あんな凄惨な事件を」
「どうしてこんな酷い」
とか、世間や周囲は感じるかもしれませんが
本人なりの理由があるのです
「唐突な事件」の共通点は「孤立」??
「頼れる家族がいない」「相談できる人がいない」
といった「孤立」でした
パニックに陥るまでストレスを溜めてしまうには
「気にかけてもらえないこと」
という、社会的なつながりがなかったことがポイントで
この「孤立」が
発達障害を持った人、何らかの特性がある人には
この世での「生きづらさ」を加速させてしまいます
環境や周囲の人間関係は
どれだけ特性があって人嫌いに見えても
本当は大事なのです
現在は孤立を防ぐためのさまざまなサービスがあります
くしくも、この事件が起きた2005年4月
発達障害者支援法
が施行されています
逆に言えば
それまでは「知的障害のない自閉症」という人たちは
その存在すら疑われていたのです
(ただし、最初の指摘は1940年代前半のドイツ、アスペルガー医師)
また
- 少年院や刑務所の滞在期間中に障害者手帳/療育手帳を取る
- NPO法人など福祉とつながる支援の広がり
- 児童自立支援施設や、仮退院・仮釈放、保護観察などの制度の広がり
法務省から発表されている通り
こういった「加害者に対する支援」は
いま、広がりつつあります
障害者も、社会で、地域で生きる
障害者であっても
魚が川にいるように
鳥が空を飛ぶように
人は社会で、地域で生きていきます
誰もこの問題から
目を背けることはできません
議題②:規則正しい生活には馴染むも「反省しない」人たち
大阪姉妹殺人事件についても
ほかの犯罪でも共通して起こるのは
「理論で説明しても理解できない」
という彼らの抱える問題です
「被害者感情」「それをされたらどう思うか」
といった普通の人が当たり前にわかることが
全く理解できないことがあります
決まり切った生活には馴染むので
少年院や刑務所での生活では優等に過ごせますが
社会は決まりきったこと以外も起こります
ここが彼らの大きな壁になっています
「反省なき更生」という考え方
反省なき更生
という考え方があります。
それは
「再犯を防止することに重点を置いて」
「教育、指導を行っていく」
ということです。
今後、再犯を起こさせないために「孤立」を防ぐ
再犯を起こさないためには
「孤立」を防ぐこと
彼らのことを理解し、支える
そんな人たちが彼らのそばにいれば
彼らに相談先さえあれば
再犯を防げるのではないか
そんな考えのもと
先ほども書いたようなサービスが構成されています
新たな問題:発達障害を認めたくない人たち
しかし、サービスが整っても
そのサービスに寄り付かない人がいます
障害者手帳や療育手帳を取得するにも
自立のためのサービスに乗るとしても
本人や親の同意は絶対に必要です
そんな中で
「自分(我が子)は発達障害じゃない」
「そんな支援などいらない」
そうやって拒否をする人がいます
孤立を防ごうとしても「孤立」してしまう
周囲がいくら孤立させないために頑張っても
その手からこぼれていってしまう人はいます
そうだとしてもそれでも
手を伸ばすことをやめてはいけないのです
まとめ
本日は以上になります。
最後までお付き合いくださりありがとうございました!