発達障害を持つ女医がこころの病気と健康について語る。
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いじめを受けたことのある全てのひとへ、伝えたいこと。

 

学校や塾などで、いじめを受けたことはありますか?

平成18年に文部科学省から出された、いじめの定義はこれです。

「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。

少し難しいので簡潔に書こうと思います。

小学生や中高生の子どもが、同じ学校の友人や知人から、暴力を受けたり、傷つけられるようなことを言われたり、インターネットで悪口を言われたりするなど、「心や身体が傷ついた」と本人が思っていること。

と言い換えたら少し分かり易いでしょうか。

いじめについて、たくさんの施策や指針を文部科学省は出しています。

この「いじめの問題に対する施策」というページでは、文部科学省から発表されているたくさんのいじめに対する政府の方針、学校にどう対応して欲しいかなどが、詳しくまとめられています。
また、全て平成18年に定められたものではなく、年々書き換えられていることも、ページをよく見るとわかると思います。

学校は、文部科学省の指針通りに行動してくれるでしょうか?

たくさんのことを文部科学省が発表していても、それぞれの学校はちゃんと対応してくれるでしょうか?
メディアでは、学校がちゃんと対応していないと、たくさん報じています。
「いじめに対して助けを求めた生徒を教師が叱責し、3時間後に自殺」
「岐阜中3死亡、いじめ告発を生かせなかった」

ここまでのまとめ

文部科学省がどれだけたくさんの指針を出していても、施策をまとめていても、現場である末端の学校では、それをきちんと生かし切れておらず、いまだにいじめによる自殺が後を絶たないということがわかります。

これは厚生労働省の統計ですが、10代の自殺率は過去最悪になっています。

 
子供は減っていっているのに、自殺する若者の数は増えていっている。
 
そして、これが自殺の原因と言われている統計グラフです。
 

統計では「家庭問題」と「いじめ問題」が多いと言われていますが、本当はいじめが原因で自殺をしても「学校ではいじめはないと把握していた」と記者会見で言ったりしているのを見ると、この統計は「本当に正確なのか」と考えてしまいませんか?

私も、いじめられっ子でした。

金銭を奪われたりするようなことはなかったものの、主に小学校を中心として、いじめを受けてきました。いじめの内容は、以下のようなものです。

具体例
  • 小学校1年時、担任に「この子は教える前から全部知っているので嫌い」と言われる。
  • 授業の中で行われたかくれんぼで、見つけてもらえずその後の授業が私はいなかったかのように進む
  • 掃除の時間にいじめの主犯の子に「教壇の上で歌え」と脅され泣かされる
  • いじめの主犯の子に「クラスの全員の靴に砂を入れろ」と脅されやらざるを得なかったが、その子が先生に「あの子が一人で全部やっているのをみていた」とちくり、先生にこっぴどく怒られる
  • 登校すると上履きがなく、探すとなぜか焼却炉の中から出てきた
  • 体操服が入った袋が何故かゴミ箱の中から見つかった
  • 机に「死ね」と落書きされる

最近のいじめに比べるとまだまだ幼さの目立ついじめかもしれませんが、当時の私には辛いことで、またいろいろな事情が重なって、小学校5年生で、転校しました。
当時はいじめでの転校は認められていませんでしたので、住民票を別の学区内に移動して、転校しました。

なぜ、いじめられた側が転校しないといけないのか?

悪いのはいじめた側なのに、なんでいじめられた側が転校しないといけないの?
 
これ、当然の疑問だと思うんです。いじめは、いじめた方が悪い。
「いじめ」などという生温い言葉でいうのではなく、「暴行」で「恐喝」じゃないか、というようなことが、現在の学校では行われているのです。
なぜ、「罰される」ことがほとんどなく、いじめた側が転校するのか。
 
正論です。いずれ、そういう世界になって欲しいと、心から願っています。
 
でも今はそういう世界ではないので、あなたが逃げるしかないのです。
幸い、「学校に相談すれば、住所を変えずに転校することもできるように」なっています。
 

守って欲しいのは、あなたの心と命

 
学校は、命がけで行くところではありません。不登校という選択肢も、あると思います。
でも、あなたには「教育を受ける権利」があります。
いじめた側は教育を受ける権利が行使されているのに、あなたには教育を受ける権利が保障されない、それはやっぱりおかしいと思うのです。
 
いじめられてきた私が「今」いじめられているあなたに伝えたいことは。
 

伝えたいこと
あなたの世界は、今は「学校と塾」「習い事」が全てだと思います。
その「世界」は、非常に狭い世界です。あなたの見えない大きな世界が、この世にはあります。
大人になれば、世界が広いということを嫌でも知ることになるでしょう。そこでは、あなたをいじめる人からは逃げていいし、「いじめ」と片付けられることもないので、警察に被害届を出すこともできます。
 
だからそれまで、あなたの心を守ってください。
死ぬ方が楽に思えるかもしれませんが、絶対に死なないでください。

まとめ

まとめ

文部科学省はいじめに対していろいろな案を出していますが、現場の学校までは浸透していません。むしろ、学校は責任逃れに必死です。
いじめた側が悪いのは、絶対にそうです。でも、いじめた側を変えることは難しい。
だからあなたの心が壊れる前に、命を断ってしまう前に、助けを求めてください。
それは「不登校」という形でも構わないし「転校」という形でも構いません。
 
大切なのは、あなたの心であり、命です。

今回は最後におすすめの本をあげさせてもらいます。

 
どちらも、いじめられてきた人が、今を振り返って、今いじめられている子どもたちに伝えたいことを書いている本です。中井久夫先生は、統合失調症の研究の第一人者で、神戸大学の名誉教授をされています。何十冊もの著書があり、精神科医ならば知らない人はいないぐらいの人です。
中川翔子さんは、言わずと知れたタレントさんで、いじめなどの経験を赤裸々に語ってくれますよね。テレビでも。でもこの本が集大成だと思います。
どちらの本も、ぜひおすすめですが、本を読むのにもエネルギーが必要という方は、中川さんの本から読んでいただければと思います。

今日は以上になります。最後までありがとうございました。

April 30, 2020 - posted by みずき@精神科医