発達障害を持つ女医がこころの病気と健康について語る。
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『非定型精神病』とはなにか−関西ローカル?の病名−

 

非定型精神病って聞いたことありますか?

    
    

『非定型精神病』という病名を、聞いたことはありますか?
   
この病名は、『主に関西圏を中心として』使われる病名で、
関西から他の地域への紹介状で使ってしまうと、
   
相手の先生を「???」としてしまう病名でもあります。

   
   
今回は、そんな非定型精神病について、お話しさせていただきたいと思います。
   
   
あ、そんな非定型精神病ですが、
「精神神経学会専門医試験」
では、問われることがあります。
受験する方は要チェックです!!

   
   

非定型精神病について

   
   
非定型精神病については、
当初の概念と現在の概念が違っています。
   
   
まずはそこから、
見ていきましょう。
   
   

当初の概念

   
   

「非定型」の対義語は、「定型」です。
   
「定型の病気でない」という意味で、
「非定型」という言葉が使われていました。
   
ここでいう「定型の病気」というのは、
統合失調症・躁うつ病・てんかん
のことです。

   
   

現代の概念「満田(・鳩谷)の非定型精神病」

   
   
一方で、現在の『非定型精神病』の概念は、
1942年に満田久敏Drが提唱したものです。
   
   
具体的な中身については、
このあとで説明します。
   
   
このあとで語ることは、
すべて「満田の提唱した非定型精神病」

だと思ってもらって構いません。
   
   
その後に続く研究者としては鳩谷Drという先生がいます。
   
   
近年「非定型うつ病」という病名が、
一般の人にも目につくように使われていますが、
それとは全く違う概念です。
   
         

国際的な概念ではない

   
   

そのため、国際的には通じません。
国際的に通用する言い方に置き換えると、
『統合失調感情障害』
になります。

   
   

非定型精神病の「症状」について

   
   
では、非定型精神病の症状について、
少し詳しく見ていきましょう。
   
   

非定型精神病の症状
  1. 急激な発症で、
    発症する前にはなんらかのストレスがあり、
    誘引がはっきりと思い当たる
  2.    

  3. 意識変容があり、
    「もうろうとしている」時期がある
    (統合失調感情障害との違い①)
  4.    

  5. 治療への反応性が良好である
  6.    

  7. 治療後は完全に元の状態に戻り、
    ひどかったときの症状を全く残さない
    (統合失調感情障害との違い②)
  8.    

  9. 再発をすることが多い
  10.    

  11. エピソードとエピソードの間は、
    薬を全く飲まなくても維持できる期間が存在する
    (統合失調感情障害との違い②’)
  12.    

  13. 治療期間は3ヶ月以内におさまる
    (統合失調感情障害との違い③)
  14.    

  15. 緊張病(拒絶・無言・カタレプシーなど)
    のような症状をきたすこともある
  16.    

   
   
ざっとあげるとこのような症状が見られます。
(診断基準については
この「もりさわメンタルクリニック」
のページを参照ください)
   
国際的には統合失調感情障害というしかないけれども、
実際の非定型精神病とは違いが多いです

   
   
非定型精神病については
日本では何冊かの本が出版されており、
   
   


   
   
あまり「非定型精神病」という名前を
普段使わない先生たちには、
この本が非常におすすめでもあります。
       
        

非定型精神病の治療

   
   
では、非定型精神病の治療は
どうやって行われるのでしょうか。
   
   

 非定型精神病の治療 
  • 基本的には薬物治療
  •    

  • 抗精神病薬・気分安定薬を使う
  •    

  • 治療への反応性は良好
  •    

   
   
ということで、
   

治療については、
定型の病気と変わりなく、
抗精神病薬と気分安定薬を使います。

   
   

なぜ「関西ローカル」なのか?

   
   
では、この病名はなぜ、
関西圏を主として使われ、
他の地方には馴染みがないのでしょう。
   
   

提唱者である「満田先生」が大阪医大

   
   
提唱者である満田久敏先生が主として活躍されたのは
大阪で、大阪医科大学の教授を務めておられます。
   
   
そのため、関西には広まったのでしょう。
   
   

それに続いた「鳩谷先生」が三重大

   
   
満田先生に続いて研究されていた鳩谷龍三先生は、
三重大学にて研究をされており、名誉教授にまでなっておられます。
   
   

ただし三重県は名古屋圏でもあり現在では通じにくい

   
   
ただし、三重県の精神科病院は、
名古屋からこられている先生も多く、
今では三重県で「非定型精神病」は、
満場一致で使われる病名ではありません。
   
    

関西圏にとどまる理由は不明

   
   
そんなわけで、「関西圏に広まった」理由は、
上記の2つでいいと思うのですが、
「なぜそこから全国展開しなかったのか」
という部分については、はっきりしませんでした。

   
   
今ほど全国的に医師の交流が
さかんではなかったのかもしれません。
   
   

「こんな病名もある」と知っていてほしい

   
   
ただ「こんな病名もある」
と知っていてほしいのです。
患者さんが紹介状を持ってきたときに、
「そんな病名はないよ」といって
患者さんを傷つけて欲しくないと思っています

   
   
ただ、少し関西では乱用されすぎている気がします。
(統合失調感情障害とした方がいい人に
 非定型精神病」とついていることも多い)
   
   

まとめ

   

まとめ
  • 関西を中心にして使われており、
    他の地方では馴染みのない病名として、
    「非定型精神病」という病名がある。
  •    

  • 国際的には、
    「統合失調感情障害」
    と置き換えるしかないが、
    実はいろいろと違う部分がある
  •    

  • 患者さんに既に病名が伝わっている場合は
    自分には馴染みがなくても病名を否定しないでほしい
  •    

  • 一方で治療については
    統合失調感情障害と同じである
  •    

  • エピソード間では
    薬をやめられることがあるので、
    薬を止める選択肢もある
  •    

   
   
本日はここまでになります。
最後までお読みいただいてありがとうございました!