発達障害を持つ女医がこころの病気と健康について語る。
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髪の毛を抜いちゃう「抜毛症」の話と体験談。

 

「抜毛症」という病気を知っていますか?

「抜毛症(ばつもうしょう)」という名前を聞いたことはありますか?

聞いたことがある方も、初めて聞いたという方も、せっかくなのでこの先を読んで抜毛症のことを知ってくださると嬉しいです。

抜毛症とは
  • 「意識的」「無意識的」に関わらず髪の毛を抜いてしまう
  • ハゲが出来てもやめることができない
  • 髪の毛に限らず眉毛やまつ毛や指の毛、腕の毛など、全身の毛が「抜くこと」の対象になります。
  • 地肌にできたカサブタをむしったり、さらに傷を広げる行動も見られます。
  • 抜いた毛を「食べてしまう」こともあります。
    →これは正式には「食毛症(しょくもうしょう)」という病名になります。
  • 女の子に多い病気ですが、男の子にもいます。

少し、イメージが湧いたでしょうか。
「あれ、私が髪の毛抜いていたのはそうだった?」という人もいるかもしれません。

原因は「ストレス」?

抜毛症の原因は、長年「ストレス」や「不安」だと言われていました。
そのため、原因となる「ストレス」や「不安」を除去することが治療だとされてきました。
実際、その治療で改善を認める人はとても多いです。

ただし、今は遺伝的なセロトニン受容体やドパミン多型が原因、という報告もあります(リンク先は原著論文です)。
これは2013年の論文なので、今後の続報が待たれるところです。
もし、遺伝的な異常があるのであれば、今はない「治療薬」に可能性が広がります。
 
ただやはり、現在のところ、「現実的な治療」としては、「ストレスの軽減」や「環境の調整」が重要です。

周りの人の対応の仕方

「ストレスの軽減」や「環境の調整」となると、「周囲の家族の協力」「友人の協力」というのがとても大事になってきます。
その時に、気をつけて欲しいことがありますので、リストにしてみます。

チェックリスト
  • ストレスの軽減には「本人の意思」を一番尊重してあげてください。
    →「受験関係」でストレスを溜める子も多いです。「その学校に本当に行きたいのか」など、親の期待はグッと堪えて、本人の意思を尊重してあげてください。
  • 「髪の毛(他の毛でも同じ)をこんなに抜いて!」と言ったことを、本人には言わないようにしてください。
    →気になるのかもしれませんが、厳しいことを言うと、それは「親の不安の解消」に子どもを利用しているだけです。
  • 頭皮や地肌のケアは念入りに一緒にやってみましょう。
    →「大切に扱われている」「親は自分を気にかけてくれている」と言った前向きなメッセージが伝わります。ケアをしてあげると傷の治りも早くなります。
  • ただひとつ、「抜いた毛を1ヶ所に集めて可視化する」と言うやり方は効果がある時があります。
  • 周囲は常に冷静に、本人の「抜毛」を気にしていないように振る舞いましょう。
    →「隠す」「隠さない」も本人の決断を尊重しましょう。
  • 焦らない。
    →親の焦りは子どもに伝わります。ゆっくり気長に、時間のかかる病気だと思っておきましょう。

ハゲが目立ってきてしまったら

そうは言っても、ハゲが目立ってくると、「こんな状態では人前に出られない」と言って不登校に繋がることもあります。
そんな時には、以下のような方法を試してみてください。

 試してもいい方法 
  • いっそ丸坊主にする。
    →男の子を中心にしてできることですが、対象が「髪の毛」だけならアリだと思います。対象が別の毛にならないかどうかだけ、気をつけて見ていてください。
  • ウィッグを作る
    →ウィッグを抜いてしまう可能性もありますが、それはすぐに作り直せるので、見た目を保証してもらえます。最近のウィッグは本当に良くできているので、見た目ではわからないです。
  • 帽子をかぶる
    →交渉次第では、学校内でも帽子着用の許可をもらえる可能性はあります。その際は、病院に受診して診断書などを用意していくといいですね。
  • 精神科に受診する
    →家族や周囲だけではわからなかったストレスが、見つかる可能性があります。

私も、実は抜毛症でした

私も、小学校3年生〜大学卒業まで、抜毛症でした。
小学校ではいじめられっ子で、授業が終わると椅子の横に髪の毛が束になって落ちている、と言うことがありました。
後、「毛根を食べていました」。これは食毛症だったと思います。
また、爪を噛んだりすることも多かったので、ストレスが大きかったのだと思います。
 
ただ、1ヶ所から抜かずに満遍なく抜いていたのか、ハゲはできませんでした。
そして大学生になった後は、「陰毛」や「指の毛」を抜くようになっていました。
肌はあれ、かさぶたも多く、埋没毛ができるので、それを毛抜きで掘り起こして抜いたりしていました。
 
私がとった対処法は、「エステで脱毛する」でした。
最近は介護脱毛と言って陰部の毛を全て脱毛しておくのが流行っているようなので、
(メラニン色素に反応して脱毛できるらしく、白髪が混じってしまうとダメなようです)
スーパー銭湯などに行ってもジロジロ見られることはなくなってきました。
でも、人に理由を聞かれたら「毛を抜いてしまう癖があって、肌が荒れて酷かったので脱毛した」と正直に答えることにしています。
 
私にとってのストレスは「人間関係がうまくいかないこと」「他人(親すら)を信じられないこと」だったように思います。
そして、今でもストレスがたまると寝ながら髪の毛を鷲掴みにして引っ張っているようです。

まとめ

まとめ

抜毛症だけを扱った本は売っていません(強迫性障害の中に入りますが、検索してもどの本が抜毛症を扱っているかはわからないと思います)
遺伝的な要素も疑われていますが、基本的には「ストレス」と「環境調整」で、時間をかけてゆっくりと良くなっていく病気です。
対症療法としては坊主にしたり、ウィッグを使ったり、いろいろと方法がありますが、
根本のストレスが解決しないとなかなか「完全にやらない」と言う状態はありません。
気長に、ゆっくり、長期戦を見据えていきましょう。

May 02, 2020 - posted by みずき@精神科医

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