発達障害を持つ女医がこころの病気と健康について語る。
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人を信頼できない人−信頼障害と依存症とストレス耐性について−

 

育ってきた過程で問題のあった人たち

   
   
今回は、「人間を信頼できないこと」を、
メインとして書きたいと思います。
      
     
なぜこの「信頼できない」ということに
フォーカスをあてるかというと、
   
「信頼できない人」「信頼できないこと」が
あらゆる「依存症」と関わっているからです。

   
      

ここでいう「育ってきた過程の問題」とは何か

    
    
では、「育ってきた過程の問題」について、
ここで定義をします。
    
    

育ってきた過程の問題とは
   

  • 15歳までに親の離婚を経験している
  •    

  • ネグレクト・身体的虐待・性的虐待
    を受けたことがある
  •    

  • 親のDVを目撃していた
  •      

  • 親の愛情を「受け取った」実感がない
  •    

  • 親が喧嘩ばかりしていて、
    「自分は家には居場所がない」と思っていた
  •     

  • 自宅に問題はなくても、
    学校(その他)でいじめに遭っていた
  •    

  • 15歳までに身近な家族が「自殺」している
  •     

  • 親が精神疾患を持っている
  •    

   
   
ざっとあげるとこんなところです。
   
ただ、これが全てではないので、
自分で「あれ?」と思うことがあったら、
立ち止まって「問題だったかどうか」

ということを考えてみましょう。
   
   

表面的な現れ方としては2種類あります

    
    
では「問題がある育ち方」をした人は、
その後の人生でどんな問題が出てくるのでしょうか。
   
   

1、「見えにくい」生きづらさの表現をしている人

    
    
第1に、「見えにくい」表現をしている人。
   
   
それは、例えばこんな人です。
    

人生は「我慢」が基本。
どんな頼まれごと、嫌なことも、
「笑顔」で受け流してしまう
   
どんなときも「頑張って」、
自分の気持ちを押し殺して「頑張ってきた」

   

    
    
どうでしょうか。
思い当たる人はいませんか?
   
   

2、「見えやすい」生きづらさの表現をしている人

    
    
一方で、非常に分かりやすくい、
生きづらさを表現している人がいます。
   
   
それは、たとえばこんな人です。
   

子どものころから、
「万引き」などの非行を繰り返し、
家出をしたこともある。
   
中学生になると不良グループに入り、
仲間の誘いのもとで「違法薬物」に手を染める

   

    
    
どうでしょうか。
「そんな人を見たことある」とか、
「自分はそうだったな」とか、
そういうことはありませんか?
   
   

どちらにしろ「生きづらさ」を抱えている人は問題を抱えやすい

   
   
どちらも、表現のしかたこそ違えど、
「生きていきにくい」と感じている人たちです。
   
   
次からは、その生きづらさを抱えている人が、
陥りやすい人生のパターンについて、
考えてみましょう。
   
    

育ってきた過去に問題があると依存症に陥りやすい

   
   
育ってきた家庭に問題があると、
さまざまな精神疾患のリスクがありますが、
今回は「依存症に陥りやすい」ことについて、
話を進めたいなと思っています。
   
   

覚醒剤・シンナーなどの違法薬物は「見えやすい」生きづらさを抱える人に多い

    
    
違法薬物などに手を染めるのは、
「不良グループ」に属している人が、多いです。
   
   

それは、せっかく見つけた
「不良グループ」という居場所、
   
その仲間から外されることへの恐怖、
帰属感を持ちたいといった思いから、
「誘われたら断らない」姿勢につながります。
   

   
   

アルコール・食事の問題(摂食障害など)は「見えにくい」生きづらさを抱えている人に多い

   
   
一方で、合法的な依存症。
   
   

アルコール依存をはじめ
   
衝動買いを繰り返す人
   
リストカットをしてしまう人
   
過食・拒食・無理なダイエットを繰り返す人

   
など、法律は侵さないけれども
広くは「依存症」の定義におさまる行動
に入るような行動に「依存」します。
   
   

彼らは、家族などの「守るべきモノ」があるので、
「違法行為」にあたる「依存症」には手は出しません。

   
   
では、こういった人たちに対して、
「いわゆる依存症の治療」は
なにができるのでしょうか。
   
    

依存症の治療

    
    

例:アルコール依存症の治療
  • 治療をする意欲を高める
  •    

  • 自分が病気だと認識する
  •    

  • お酒から「離脱」する
  •     

  • 身体の治療もする
  •     

  • お酒をやめる
  •    

  • 情緒を安定させる
  •    

  • お酒をやめることを続ける
  •    

   
   
アルコールを具体例に出しましたが、
   
日本には「覚醒剤の依存」など違法薬物は、
病院に行く前に「警察で罰される」
ことから始まる
ので、
   
まだまだ、
「依存症の治療より懲罰が優先される国」
です。
   
そして、
   

情緒を安定させる

   
   
というのは、依存症治療では、
いちばん困難なことのひとつで、
彼らはなかなか医療者を信じないことが多く
   
情緒が安定したように見えても
ストレスを抱えるとまた元の依存に戻ってしまう
ケースがたくさんあります
   
   

「依存症」からの脱却には依存症の治療だけでは足りない

   
   

彼らは、「育ってきた過程で抱えた生きづらさ」のため、
   
「人」を信用していません。
   
「他人」だけではなく「自分」も信じていません。

   
   
ここを「なんとか」しないと、
「依存症」の悪循環から、
逃れられない状態が続いてしまいます

   
   

彼らは「人」を信用していないので、
「モノ」というものは自分を裏切らないと思い、
依存していきます。
    
ただ、覚醒剤もアルコールも耐性がつくので
徐々に量が増えていったりしますし
   
そういった行動の後で
「空虚感」「むなしさ」
などに苛まれることがあります
   

   
   
   
では、そういった人の「情緒が安定する」には、
いったいどういうことが必要なのでしょうか。
   
   

「モノ」ではなく「人」に頼るためにはどうしたらいいか

   
   
ズバリ、結論としては。
   
   

他人や自分を信じられるようになると
徐々に精神が安定してくる、のです

   
   
でも、「育ってきた過程」に問題がある人が、
そんなにかんたんに「人」を信用するでしょうか
   
    

そんなはずは、ないですよね。

   
       

「親」である必要はない、正しく「人を信じられる」ようになろう

   
   

「でも、親からいまさら愛情もらえない」
   
「信じられるような人なんていまさら現れない」

   
そんな声が、聞こえてきそうです。
   
   
どうしていけばいいのでしょうか。
今回は軽くしか言えませんが、
少しでもヒントになればと思います。
   
まず、親と和解する必要はありません。
わかり合えない人とは距離を置きましょう。
   
また、あなたを依存症に引き入れた人とは、
関係を断った方が良さそうです。
   
   

まずは、「居場所」になるところが必要です
自助グループが望ましいですが、
依存症の入院治療で、
同じ病気に立ち向かう仲間も、
「居場所」としてはありえます。
   
その中で、ひとりでもいいので、
「カッコをつけないでいられる相手」
を見つけてほしいです。
   
依存症の治療は長くなります。
また「モノ」や「行動」に気持ちがむかってしまうこともある
そんなときに、それを隠さずに言える相手
それを伝えても否定しない相手
そんな相手が、彼らには必要なのです

   

   
   

大事なことは「焦らない」こと

    
   
気持ちがはやることもあると思います
早く「まっとうな道」に戻りたいと、
焦ることもあるかもしれません。

   
   

でも、大事なことは「焦らないこと」と「諦めないこと」です。

   
    
気長に付き合ってくれる、
主治医と巡り合えることを祈ります
   
   
過去の全てがからんでいるので、
本当にむずかしいことですが、
諦めずに「なんとかしたい」という思いだけは、
なくさないでいてほしいなと思います

   
   

まとめ

   

まとめ

過去に、「育ってきた過程で問題があった人」は、
依存症に陥る危険性が上がります
わかりやすく「生きにくさを表現」する人と、
わかりにくい「いきにくさの表現」をする人がいます
   
どんなものに「依存するか」は、
2つの生きにくさの表現で変わりますが、
根本にある「人を信じられない心」は、
共通するものがあります。
   
ここを「なんとかする」ことが、
今の日本の依存症の治療で、
軽視されていることかもしれません。
   
覚醒剤の再犯率を見れば、
懲罰を与えて依存が治らないことは、
既にはっきりしているのですが・・・。
   

   
<本日の参考文献>