発達障害を持つ女医がこころの病気と健康について語る。
よりすぐりの正しいことを発信して、どこまでいけるのかチャレンジするブログ
  YouTube

「産後うつ病」は「産後」からだけじゃない!(体験談より)

 

「産後うつ病」っていつからなるの?

以前、記事を書いたときには「育児ノイローゼ」から入ったこともあり、
「出産のあと」に起こるものなのかな、という印象を与えてしまったかと思います。

産後うつ病の症状

まずは、どんな症状が特徴的なのか、から復習しましょう。

産後うつの症状
  1. 気分が落ち込む
    →通常のうつ病と同じで、朝が一番調子が悪くて、夕方になると少しマシになります
  2. 急に泣きたくなる
    →泣きたくなる理由はさまざまですが(子供が泣き止まない・夫が協力してくれない)、なんの理由もないのに泣きたくなることもあります
  3. イライラする
    →ささいなことに振り回されて、普段ならイライラしないようなことでイライラします
  4. 眠れなくなる
    →寝つきが悪い、途中で目が覚める、朝早くに目が覚める、などいろいろですが、子どもが泣いて起こされているわけでもないのに眠れなくなります。
  5. 何も楽しくなくなる
    →いつも楽しめていたことが楽しめなくなります。「自分の子どもが可愛いのは当たり前」と頭で分かっていても、可愛く思えなくなることもあります
  6. 食欲が増えたり減ったりする
    →典型的には「食欲が減る」のですが、「食欲が増える」人もいます。「食べたいわけではないのに食べていないと落ち着かない」という人もいます。
  7. 罪悪感が強くなる
    →「こんな私がこの子どもの母親でいいのか」など、自分の存在価値やできていないことに目がむきすぎて、罪悪感が強くなります
  8. 赤ちゃんの体重の増減などが気になりすぎる
    →うんちをすれば体重は減るし、よく飲めば体重は順調に増えていきます。ことあるごとに体重を測って、一喜一憂してしまうのは、少し良くない状態です。
  9. 上手に育児ができていないと思いこむ
    →周囲から見たら十分にやっているのに、「まだ足りない」「これができてない」と自分を責めてしまうことがあります。完璧主義、に近いです。

まだまだ症状を上げていくとキリがないのですが、主だったものは上の通りです。
ここでさらに「自分の子どもが可愛くないなんて」「そんなの気持ちの問題」などと周囲の人が言うと、さらに状態は悪化しますので気をつけてください。

「産後うつ病」の1/3は、妊娠中から始まっている

でも実は、「産後うつ病」の1/3は妊娠中から始まっているのです。
ですから、旦那さんなどの周囲の方は、妊娠中からネガティブな発言が増えていないか、落ち込んでいないか、など、奥さまのことを注意深く見ていてください。
妊娠中は確かに薬は使えませんが、早期発見早期治療につながります。

「産後うつ病」の人は、その後躁うつ病になる危険性が高い

デンマークの研究では、産後にうつ病などの感情の障害で治療を受けた人がその後躁うつ病と診断された人が2.64%であったのにたいし、妊娠とは関係のない時期に感情障害の治療を受けた人がその後躁鬱病と診断される割合は1.77%と有意差が出たという報告があります。
(引用元: J CLIN PSYCHIATRY, 78, e469-e476, 2017Depression and Anxiety in the Postpartum Period and Risk of Bipolar Disorder: A Danish Nationwide Register-Based Cohort Study.LIU, X., AGERBO, E., LI, J., et al.
(リンク先は医療従事者しか見られないページとなっているので見られなかったらゴメンナサイ)
また、ご両親のどちらか、または両方に「躁うつ病」などの既往歴がある場合は、さらにリスクが上がります。

みずき@精神科医の場合

 産後うつの経験者として 

私は、もともと「躁うつ病(Ⅱ型)として治療を受けていました。
妊娠をきっかけに断薬したので、一気に薬をやめた時は全く眠れなくなりました。
(ただし、主治医に相談せずに薬をやめたのが良くなかったと思います)
つわりが治まったころは、健康診断の問診のバイトなどをして息抜きをしていました。
ただ、前駆陣痛(陣痛が来るかも、というお腹の張り)が出だしたころから、
「イライラしたり」「気分の波が大きくなったり」「眠れなくなったり」しました。
そのため、産婦人科の先生と相談の上、陣痛促進剤を使って出産しました。
その後は先ほどあげたような典型的な症状が次々と襲ってきて、産婦人科の退院までの5日間が、もちませんでした。
産婦人科を退院したその足でもともと通っていた精神科に駆け込み、薬をもらって治療を再開しました。
ですから、子どもには初乳しかあげられていません(特に乳首も子どもが吸いにくい形だった)。
うつ状態を抱えての育児は、とても1人では無理でした。義両親に頼り、保健師さんの訪問をしてもらい、認可外保育園に預けたりもしました。

子どもは中学2年生になり、私はフルタイムで働いている

現在、子どもは中学2年生になりました。私もフルタイムで働き、当直勤務もこなしています。
母乳はほとんど飲まず、ミルクで育ちましたがなんの問題もない元気な子です。
私も疾患に対しての理解を得ながら、精神科医として勤務しています。
産後うつは、人生の終わりじゃなくて、ステップの一つに過ぎませんでした。
もちろん、その時は本当に苦しかったですけどね。

これは蛇足なのですが、奥さんが妊娠・出産をしたことで「産後うつ病」のようになる旦那さんもいるようです。かなり稀ですが、知っておいて損はないです。

まとめ

まとめ
  • 産後うつ病という名前だけど、妊娠中から始まることもある(1/3)
  • 妊娠中から、周りの人は妊婦さんになった人の精神状態を気にして見てみよう
  • もし、おかしいな、と思ったら、産後、精神科で相談してみよう(早期発見早期治療が大事です)
  • 「母乳じゃないと」「自分の子どもが可愛くないなんて」なんていう人は放置!
  • ミルクでもちゃんと子どもは育ちます。しんどい時期が過ぎたら可愛いなと思える時も、くるかもしれません。
  • ひょっとすると、長年の経過で躁うつ病になるかもしれません。長い目で、見守りましょう
  • 苦しんでいるのは、あなただけではありません。いつか乗り越えられる日が来ます。私が乗り越えたように。

これは、つらくなったときに、つらくなった先輩たちが書いていった本です。
ひょっとすると、あなたが知らないこと、あなたを勇気付ける言葉、見つかるかもしれません。