発達障害を持つ女医がこころの病気と健康について語る。
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HSP/HSCは「気質」であって「病名」じゃない、いいわけにしない!

 

「HSPだから」気遣って、という人がいるらしい

  
  

「私は繊細さん(HSP/HSCのことを日本語でこういうらしい)だから、
生きていきにくいし、がんばれなくてもしょうがないの。」

  
  
この発言、どう思いますか?
   
   
私からすると頭の中の「??」がどこにもいかなくなります。
  
  

HSP/HSCは「気質(性格の一部)」のひとつです

  
  
これは、以前の記事でも書いたのですが、HSPについておさらいしましょう。
  
  

HSP/HSCとは??
  • 考え方が複雑で、深く考えてから行動する
  •   

  • 刺激に敏感で疲れやすい
  •   

  • 人の気持ちに振り回されやすく、共感しやすい
  •   

  • あらゆる感覚がするどい(聴覚過敏など感覚過敏を持っている)
  •   

  • 共感覚を持つ人もいる(音を聞いたら色がイメージできるなど)
  •   

  • 日常生活を送ることに「非常にストレス」があって、「とにかく大変」
  •     

   
   
このあたりが定義になります。
  
ただ、「定義」というほどのこともないのです。
  
  
これは復習になりますが、
   
   

HSP/HSCというのは、
アメリカの「エレイン・アーロン博士「だけ」が言っている説

  
  
に過ぎないからです。
   
   
これは、医学論文を検索できる画面なのですが、
  
  

  
  
HSPの正式名称である「Hyper Sensitivity Person」で検索しても、
今、世の中で「HSP/HSC」と言われている概念について、
日本でも海外でも研究された論文は見つかりません。

  
  
あわよくばHSP/HSCというものが存在すると仮定して、
それは「気質(性格のようなもの)」に過ぎないのです。
   
   

HSP/HSCは「診断名/病名」じゃない

   
   
   

精神科医をはじめとする「医師」は、
世界共通で認定されている「ICD-10」に基づいて、
診断名/病名をつけています。
   
   
「保険」を使った治療には、
「ICD-10に基づいた病名」
しか適応されません。

  
  
あなたが病院でなにか薬をもらっているとして、
その薬が出されるためには「保険病名」がつけられています。
  

   
   
    
ICD-10の病名一覧
  
   
これを隅々まで見ても、
「繊細さん」「HSP」「HSC」
という単語はどこにも存在しません。
   
   
研究もされていないので、
今後「ICDに掲載」される可能性は0に近いです。
   
   
ICD-10は11に変わろうとしていますが、
時代の流れに沿って「ゲーム障害」が新しく掲載されました。

(正しく研究されていけば現代病も病名としてきちんと収録されます)
   
   
でも誰も研究してないし病名になる気配もないけど、
HSP/HSCってちまたでは流行ってるんですよ。

本当にたくさんの本が出版されています。
   
   

   
   

HSP/HSCは「頑張れない理由」になるのか

   
   
最初の話に戻ってみましょう。
   
   
「自分は繊細さんだからがんばれない」
   
   
ということは、「周りが配慮しないといけない」のでしょうか?
   
   
どれか1冊でもこの「繊細さん」の本を読んでみてください。
   
   

   
   

   
「自分、繊細さんではないと思って読み始めたけど、
読んでたらあれもこれも当てはまるみたい。
繊細さんみたい、私ー!!
これって誰でも当てはまっちゃうんじゃないー?」
   
   

   
   
と、当院の職員さんは言っていました。
ここに、「キーワード」があります。
  
   
   

誰にでも当てはまる

   
   
ここです。
   
   

性格というのは、ひとつではない

   
   
当たり前ですが、性格ってひとつではないですよね。
   
   

性格いろいろ
       

  • 内向的
  •    

  • 外交的
  •    

  • 穏やか
  •    

  • 怒りっぽい
  •    

  • 優しい
  •    

  • 楽天的
  •    

  • 悲観的
  •    

   
   
どれかひとつにだけしか当てはまらないということ、ありますか?
   
   
たとえば私(みずき@精神科医)について書いてみると、
   
   

対外的には穏やかだけど、
実は怒りっぽいところもあるし、
悲観的に物事は考えちゃう

   
   
さっきの具体例だけでも筆者の性格、いろいろあげられましたね。
   
   
この中のひとつだとしたら、
「かなりの人数が当てはまる性格もあるよね」
ということも、わかっていただけるかなと思います。
   
   

「性格は頑張れない理由」になるのか

   
   
   

ならない

   
   
ですよね。
   
「私は悲観的だから、みんなと協力して前なんか向けない」
   
とか、仕事で言えますか?
   
   

「HSP/HSC」は反医療と親和性が高い

   
   
   

   
そのHSPが、医療者を目の敵にしている「反医療」と結びついています。
   

   
   
世の中にはいろいろな反医療があります。
「がん放置療法」「精神科なんて存在しない」「反ワクチン」
などなど。
  
   
そういう人たちが「HSP本の翻訳」などに関わっていっています。
   
「自分は病気じゃない」と思いたい人たちの駆け込み寺になってます。
   
   

「障害の存在」は受容できても、自分と関わる人は「病気であって欲しくない」

   
   
そんな考え方、日本ではまだまだ根強いです。
   
   
「障害福祉施設で働いておきながら、
自分の家族は障害者であって欲しくない」
と思っている人はたくさんいるのではないでしょうか。
    
        
そんな「家族の障害を受け入れられない」人たち。
「頑張れない自分」を誰かのせいにしたい人たち。
   
   

   
そんなときに、いい逃げ場になるのが、
「HSP/HSC」という考え方、になっています。

   

    
    
高額セミナーなども行われていますが、
「保険診療よりも高額なサービス」
は基本的におすすめできません。
   
      
相手はあなたを生きやすくしようという考え方ではなく、
「あなたからいくらお金が引き出せるか」
という観点であなたを見ています。
   
   
「藁をもすがりたい気持ち」
を利用されているわけです。

   
   

まとめ
  • 病気の病名は「ICD」というシステムによって決められています
  •    

  • 研究が進んでいる病気は、ICDが更新されるときに収録されます
  •    

  • HSP/HSCは研究されていないので、
    今後、HSP/HSCが「病気として認められる」可能性は0
  •    

  • ただの「性格」なのでいいわけの理由にはならない
  •    

   
   
そういうことになります。今回は少し厳しい言い方をしましたが、いいでしょうか?
   
「しんどい」が立て込んできたら
「一度病院に相談」がおすすめです。

    
    
今回紹介した本は以下になります。
一度ぜひ、このはやっている概念にふれてみてください。
ふれてみたらこの記事の意味がわかると思います。
   
   

   
   

July 01, 2020 - posted by みずき@精神科医

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