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週刊モーニング「リエゾン」から見る暴露療法

 

新しい医療マンガ、リエゾンが登場!

医療ドラマが増えているのもあり、医療マンガも増えているようです。
週刊モーニングより、「リエゾン」というマンガが登場しました。

監修は、杉山登志郎先生。期待は大きかったです。
杉山先生が監修してくださるのであれば、どんなマンガになるのだろう・・・。

現在無料で読めますので、下記のページより行ってみてください。

ただこのマンガなんですけど、私は読んだ時に唖然としました。

Twitterに見るマンガ「リエゾン」の評判

なんでそんなに唖然としてしまったの?
僕は普通に面白かったよ?

そう感じている人も多いかと思います。
では、ここで専門家のTwitterでの評価を見てみましょう。

軒並みの悪評です。私も同じ感想を持ちました。ありえない、と。

著名な先生が「監修」されていてなぜ、となったのですが、答えはこちら。
「監修」ではなく「取材協力」であった模様。

そもそも「リエゾン」ってどういう意味?

リエゾンというのはフランス語で、「連携」「連絡」を意味します。

ではこの児童精神科を扱ったマンガにふさわしいタイトルなのでしょうか?

小児科と精神科の連携、という意味であれば「リエゾン」でいいと思います。
ただどうも、「響きがいい言葉なので使われた」だけのようにも見えます。

本来のリエゾンというのは、以下の長崎大学のページのイラストがわかりやすいです。
精神科リエゾンチーム

そこも含めて、このタイトルには疑問が拭いきれません。
(現在2話まで掲載されており、少し悪評が和らいでいるので杞憂であることを願います)

暴露刺激療法ってなに?

そもそも「暴露刺激療法」って、なに?

当然の疑問だと思います。

  • 暴露刺激療法は心理療法(行動療法)」のひとつです
  • 不安や苦痛を克服するために行われます
  • 治療を行うためには本人の「意志」が必要です

 
間違っても、「泣きながら嫌だと思っている子どもの手を便器に突っ込む方法」ではありません。

暴露療法を行うことが治療になる病気は、以下の通りです(ざっくり言って)

適応疾患いろいろ
  • パニック障害
  • 強迫性障害
  • PTSD
  • 社交不安障害
  • 特定の恐怖症

 
しかし、どの病気であれ本人が「やりたい」と言わなければやりません。

高所恐怖症に対する暴露療法の一例

私の友人の精神科医に高所恐怖症の医師がいます。
彼は3階以上には住めず、デパートのエスカレーターすら乗れませんが、
そんな自分をなんとかしようと、暴露療法を自らで行いました。

その時のやり方がこちら。

ひとつの方法
  1. 展望台のある「タワー」に出かける。
    これは、高いところに自ら行くためです。ここには意思が必要です。
  2. 展望台の外側は一面ガラス張りです。足がすくみます。
    自分の動悸が治るのを待ちます。
  3. 動悸が治ったら、「一歩」外側に進みます
  4. 上記のことを繰り返し、展望台の窓までたどり着けたらその日はゴールです
  5. また再度別の日に同じことをします。
  6. 展望台の窓際まで、動悸がなく行けるようになったら完了です

 
動悸がしなくなるというのは「不安」「恐怖」がある程度抑えられたということです。
これは高所恐怖症の場合ですが、社交不安障害の方は以下の本がおすすめです。

暴露療法にも限界がある

じゃあ、一度頑張ってしまえば効果はずっと続くの?
だったらちょっとやってみようかな・・・

そう思ったあなたに、少し悲しいお知らせです。

前述した友人の医師、彼は高所恐怖症を暴露療法によって克服したのでしょうか?

答えは 「否」 です。

彼は毎週の休みのたびに暴露療法を行なっていましたが、
克服したと思いやめました。

すると、どうなったでしょう?

「長期間、間があくとすっかり元どおりの高所恐怖症」

に戻ったのです。
ですから、暴露療法も万能ではありません。
一度頑張ることで克服できる場合もあれば、克服したと思っても元の木阿弥になる場合もあります。

まとめ

それでは、今回の記事をまとめてみたいと思います。
 

まとめ

週刊モーニング「リエゾン」はちょっと現実から乖離している。
暴露療法は本人の意思が大事で、主に「不安」を対象とした治療である
万能ではなく、やめると元に戻る場合がある

今回ご紹介した本は以下になります。

March 13, 2020 - posted by みずき@精神科医

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